大判例

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福岡高等裁判所 昭和28年(う)2502号 判決

麻薬取締法附則第十六項によると同法施行前にした違反行為に対する罰則の適用についてはなお従前の例によるとなつている。その従前の例となるべき昭和二十三年法律第一二三号の麻薬取締法第四十二条第一項には麻薬施用者は麻薬を施用し又は施用のため交付した患者の住所及び氏名年令病名主要症状麻薬の施用量又は施用のための交付量及び施用又は施用のための交付年月日に関する記録を作らなければならないと規定している。

原審が本件公訴事実の第二について所論のような理由で無罪の判決を宣告していることは原判決に徴して明らかである。然し右取締法第四十二条第一項の記録作成は麻薬施行の事情の如何を問わず麻薬施用者に負われた責務であると解すべきである。従つて被告人が原判示第一において認定した麻薬中毒患者である木村健幾に対しその中毒症状緩和のため麻薬である塩酸モルヒネを施用したかぎりその施用に関して右麻薬取締法第四十二条第一項の規定する記録を作成することは自己の犯罪の自白とたりこれを期待すること不可能と断じることはできたい。

憲法第三十八条では刑事責任に関する不利益な供述を強要されないに止まり、本件のようた行政目的のための記録作成そのことは憲法第三十八条の趣旨に反するものとは到底解せられたい。原裁判所が前記公訴事実について所論のような理由で無罪を宣告したのは法律の解釈を誤つた結果法令の適用を誤りその誤りは明らかに判決に影響を及ぼすものである。論旨理由がある。

(後略)

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